剣道の胴打ち完全ガイド|当たらない原因と打ち方を日本一が解説

この記事は、剣道の胴打ち(返し胴・抜き胴・飛び込み胴・コテ胴・逆胴)の打ち方と使い分けを、試合で使えるレベルまで落とし込んで解説する完全ガイドです。
胴は、打ち方だけを練習しても当たりません。「どの技をいつ使うか」という使い分けを間違えると、いつまで経っても一本にならない——ここが胴技の一番の落とし穴です。
- 胴を狙っても相手が手元を上げてくれず、胴が開かない
- 当たってはいるのに、なぜか一本にならない
- 返し胴と抜き胴、どっちを先に覚えればいいか分からない
- 飛び込み胴や逆胴の「作り方」がイメージできない
核心はシンプルで、胴技は「相手のタイプで技を選び、打った後の“抜け方”で切れが決まる」という軸で整理できます。
今回の記事で学べることは下記のとおりです。
- 返し胴と抜き胴の違いと使い分け
- じゃんけんで理解する読み合い(後出しの後出し)
- 飛び込み胴・コテ胴・逆胴の“作り”の考え方
- 胴が当たらない・一本にならない原因の直し方
- 梶谷式・胴技を貫く3つの原則
「まず自分の症状の直し方だけ知りたい」という方は、次の症状別セルフ診断早見表から気になる項目にジャンプしてください。
彪雅KENDO合同会社
代表 梶谷 彪雅
大分県出身。高森中学校、九州学院高等学校、明治大学卒業。剣道の全国大会で9回の優勝を経験。現在は指導者・剣道家として、試合で勝つための考え方を発信しています。

個別指導・講演会
日本一9回が、その場で癖を見つけて、その場で直す。
マンツーマン、または最大3名の少人数で、実際に竹刀を交えて稽古できます。動画や言葉では届かない”手元の違和感”を、1回の稽古で1つ以上持ち帰ってもらう。これが個別指導の一番の価値です。
- 日本一9回の経験をそのまま共有(同じ壁は必ず通ってきた)
- 道場・学校・ご家庭の個人稽古、いずれも対応可能
- 初回ヒアリング無料。まずは現状を聞かせてください
※道場・学校単位での講演会・稽古会のご依頼もこちらから承っています。
まず結論|胴が当たらない・一本にならない症状別セルフ診断
先に結論からお伝えします。胴は打ち方そのものより、「相手で技を選ぶこと」と「打った後にどう抜けるか」で、当たり方も切れも決まります。
下の早見表で、自分の「詰まりポイント」がどれに近いかを確認してください。右の列から、詳しい直し方に直接ジャンプできます。
| 気になる症状 | 一言でいう原因 | 対処(詳しくはこちら→) |
|---|---|---|
| 手元が上がらず胴が開かない | 攻めで崩せていない | 飛び込み胴の作りへ |
| 返し胴が読まれて避けられる | 返しのモーションがバレている | 返し胴の急所へ |
| 相手が面を途中でやめる | 技の選択ミス | 技選択の見直しへ |
| 打とうとすると詰まる・窮屈 | 返し胴で前に行っている | 前に行かない原則へ |
| 抜き胴が面に打ち負ける | タイミングが遅い | 抜き胴の理想へ |
| コテ胴の胴が遅れて面を返される | コテを強く打ちすぎ | コテ胴の注意点へ |
| 当たるのに一本にならない・切れが悪い | 手だけで打っている | 腰の回転で直すへ |
| 逆胴で竹刀が引っかかる | 腕だけで切り抜こうとしている | 逆胴の打ち方へ |
自分の“詰まりポイント”さえ分かれば、あとはそこだけ直せばOKです。全部を一気に直そうとしなくて大丈夫ですよ
まずは、なぜ胴がこんなに難しいのか——その正体を4つのパターンで整理していきましょう。
そもそも胴打ちが難しい理由|4つのパターンで整理する
胴技は「応じて打つ」か「自分から作る」かの2系統
結論から言うと、胴が難しいのは技が何種類もあって、どれを“いつ”使うかの判断が要るからです。まずは大きく2つの系統に分けて整理します。
- 応じて打つ胴(相手が来る時に打つ)
-
返し胴・抜き胴。相手の面を待って、避けたり誘ったりして打つ。応じ技系の胴です。
- 自分から作って打つ胴(自分から攻める)
-
飛び込み胴・逆胴。自分から攻めて相手の手元を上げさせ、開いた胴を打つ技です。
これにコテ胴を加えると、試合で使う胴の主力がだいたい揃います。返し胴・抜き胴・飛び込み胴・コテ胴・逆胴の5種類ですね。
難しさの正体は打ち方ではなく“使い分け”
ここが一番大事なところです。胴の難しさの本質は、打ち方そのものより「どの技をどんな時に使うか=使い分け」にあります。
相手のタイプさえ読めれば、選ぶべき技は自然と絞れます。
ちなみに、逆胴(左胴)は「反則では?」と思う方もいますが、そんなことはありません。全日本剣道連盟の剣道試合・審判規則でも、胴の打突部位には右胴と左胴の両方があり、逆胴も正規の打突部位として扱われます。有効打突として認められるのは、充実した気勢と適正な姿勢で、竹刀の打突部を使って刃筋正しく打ち、残心があるもの——という条件を満たしたときです(この基準は面や小手と同じです)。
参考:全日本剣道連盟 剣道試合・審判規則(https://www.kendo.or.jp/)
彪進会の胴打ち解説はこちら
なお、返し技・抜き技といった「応じ技」全般の考え方(起こりの捉え方など)は、下記の応じ技完全ガイドで体系的にまとめています。本記事は“胴を打つ”ことに集中しますので、理論をもっと深めたい方はあわせてどうぞ。

まずは応じ技系の2枚看板、返し胴と抜き胴の違いから見ていきましょう。
返し胴と抜き胴の違い|比較で“使い分け”を掴む
まず全体像を表で押さえましょう。位置関係・タイミング・リスク・相手の選別、この4点で見比べると違いが一目で分かります。
| 項目 | 返し胴 | 抜き胴 |
|---|---|---|
| 相手との位置関係 | 相手が前に来ている | 自分が前に誘う |
| タイミング | 面が来た瞬間に避けて返す | 面を打ち出す瞬間に打つ |
| リスク | モーションがバレやすい | 読み間違えると面を打たれる |
| 相手の選別 | 面を打ち切ってくれる相手 | 反応が早い相手 |
返し胴とは|相手の面を完全に防いで返す(メリット・急所)
返し胴は、相手が面に来るのに対して、避けて返すという打ち方です。最大のメリットは相手の面を完全に防げること。攻防が一体になった、非常に理にかなった技です。
ただし急所があります。避けた瞬間に返し胴のモーション・動作がバレると、逆に返し胴を避けられてしまうんです。だからこそ大事なのは「返し胴だと分からないように返し胴を打つ」こと。誘いと動作を隠すのがコツです。
そしてもう一つの落とし穴。面を途中でやめてしまう選手には、返し胴は打てません。返し胴は、面を最後まで打ち切ってくれる相手に対して成立する技なんですね。
抜き胴とは|自分から少し開けて誘い、面の打ち出しを胴で抜く
抜き胴は、自分が少し面を開けてあげるイメージです。相手が面を打ちやすい状態を作りながら、相手が面を打ち出している時には、自分はもう胴のモーションに入っているんですね。
理想は、相手が面に来る瞬間ぐらいに、自分の竹刀がもう相手の胴に当たっているという感じです。自分から誘い出すぶん、相手のモーションが読みやすく、返し胴よりも面に当たるリスクが低いのも利点です。
デメリットは、相手の反応が早かったり読み間違えたりすると、面を打たれるリスクがあること。ここは一長一短です。整理すると、面が得意・反応が早い相手には抜き胴、面を打ち切ってくれる相手には返し胴、という選び方になります。
返し胴か抜き胴かで迷ったら、相手が面を「打ち切る人」か「途中でやめる人」かを見てください。技を相手に合わせる、これが胴の第一歩です。
梶谷彪雅
じゃんけんで理解する読み合い|“後出しの後出し”
この読み合いは、じゃんけんに例えると腑に落ちます。抜き胴はじゃんけん的、返し胴は後出しじゃんけん的です。
後出しじゃんけんには弱点があります。相手にバレるんです。自分がグーを出して、相手がパーを出そうとする瞬間に、こちらもパーに変える——つまり引き分けにして相殺されるイメージですね。
こちらが後出し(返し胴)でパーを出そうとした瞬間、相手が「やばい、これはパーだ」と気づいて自分もパーに変える。後出しじゃんけんに、さらに後出しをされてしまう。これが返し胴のデメリットです。
強い選手はさらに上をいきます。面を打つ瞬間に「胴で返される」と察知して面フェイントに変え、こちらのパー(返し胴)に対してチョキで後出しをしてくる。読み合いは何段にも重なっていきます。
この“後出しの後出し”は、何度も何度も試合で経験を積まないと分からない領域です。まずは基本の返し胴・抜き胴を体に入れることから始めましょう。
返し胴と抜き胴の違いは、突き詰めると「避けるか、誘うか」と「前に行くか、行かないか」。この2軸で覚えておくと、試合中に迷いません。

応じるだけでなく、“自分から作って打つ”胴——飛び込み胴・コテ胴・逆胴へ進みます。
自分から仕掛ける胴|飛び込み胴・コテ胴・逆胴の作り方
ここからは、相手を待つのではなく、自分から仕掛けて打つ胴です。共通するのは「打ち方より“作り”が勝負」という考え方。順に見ていきます。
飛び込み胴|手元を上げさせる“作り”が勝負
飛び込み胴は、自分が攻めることで相手の手元を上げさせ、開いた胴を打つ技です。面が得意な相手ほど、一歩入れば手元が上がりやすくなります。
作り方のコツは、まず普通の面を打っておくこと。あるいは表から押さえて面を打つように一歩入り、「うわ、この入りは面打ちだ」と相手に思わせる。そこで手元を上げさせて、胴を打ちます。同じ作りは、そのまま逆胴にも応用できます。
この「面を打つ作り」の精度が飛び込み胴の生命線です。面打ちそのものの質を上げたい方は、面打ち完全ガイドもあわせてどうぞ。

また、出ばな(相手の起こり)をどう読むかは、飛び込み胴の成否を分けます。出ばな技と飛び込み技の読み合いは、こちらで掘り下げています。

コテ胴|強く打ちすぎないリスク管理(実体験)
コテ胴は、コテを打つことでコテ返し面・コテ面・回し面などを狙ってくる相手に有効です。「面打ちはちょっと苦手だけどコテは打つ」というタイプや、コテ得意な相手にはとくに刺さります。
最重要の注意点は1つ。コテを強く打ちすぎないこと。強く打とうとすると、次の胴までにどうしても時間がかかってしまうんです。
これは僕自身、実際に負けて学んだことです。コテ返し胴を狙って、避けが間に合わず、相手の返し面のほうが早くて面を打たれてしまった。返したほうが打ちやすかったので選んだのですが、そこを突かれました。
結論として、コテ返し胴よりも、普通のコテ胴のほうが早く打てます。難しい技ではありますが、応用技を打ってくる相手やコテ得意な相手には、大きな武器になります。
胴打ち全体の解説動画はこちら
逆胴|三所隠し・手元を上げる相手への武器
逆胴は、三所隠しをする相手や、手元をよく上げる相手に対して、打つしかない技です。面・コテ・(右)胴が通じない相手にこそ効きます。
学年別の有効性も知っておくと選びやすくなります。小学生は三所を隠すことが少なく効きにくい。中学生は手元を守ろうとする意識が強いので、一番有効です。高校生は突きという選択肢も出てきますが、僕自身は突きよりも逆胴のほうがリスクは低いと考えています。
僕の得意技に「逆胴フェイント面」があります。逆胴をきちんと打てるからこそ、逆胴と見せかけて面に変えるフェイントが効いてくる。逆胴が打てること自体が、別の技の有効性まで引き上げてくれるんです。
打ち方のコツは、当たった後に左手を脇の下に引くイメージで抜くこと。腕だけで切り抜こうとすると引っかかりますが、左手を脇の下へ引くように打つと、意外とつまらずに抜けます。そして打った後は前に詰める。後ろに下がると追いかけられて後打ちの的になるからです。
逆胴・逆胴フェイント面はこちら
胴技5種の使い分け早見表
ここまでの5種類を、一枚の表にまとめます。効く相手・作り方・打った後の抜けまで、これを見れば試合中の判断がぶれません。
| 胴技 | 効く相手・場面 | 作り方のコツ | 打った後(前後・抜け) |
|---|---|---|---|
| 返し胴 | 面を打ち切ってくれる相手 | 張り合うぐらい前へグッと入って誘う | 前に行かない/ほぼ真右 |
| 抜き胴 | 反応が早い・面が得意な相手 | 面を打ちやすいよう少し開けて誘う | 前に行ってよい/斜め右前 |
| 飛び込み胴 | 手元が上がる相手 | 面を打つ作りで手元を上げさせる | 攻めて前へ抜ける |
| コテ胴 | コテ返し面など応用を狙う相手 | コテを軽く出す(強く打たない) | 普通のコテ胴で素早く |
| 逆胴 | 三所隠し・手元を上げる相手 | 一歩入って面で手元を上げさせる | 左手を脇の下へ引く/前に詰める |
- 飛び込み胴は「面を打つ作り」で手元を上げさせる
- コテ胴はコテを軽く、コテ返し胴より普通のコテ胴が早い
- 逆胴は左手を脇の下へ引いて抜き、前に詰める
「手元が上がる相手か、コテを狙う相手か」——まず“相手を見る”クセをつけるだけで、技選びは一気に楽になりますよ
仕掛ける胴は、打つ瞬間より「その前の作り」で8割が決まります。自分の詰まりは、冒頭の症状別診断早見表からもジャンプできます。
技は分かった。では次に、“当たらない・一本にならない”を症状別に直していきましょう。
胴が当たらない・一本にならない原因と直し方
冒頭の早見表で挙げた各症状を、ここで詳しく直していきます。ポイントは、「当たらない」は作りの問題、「一本にならない」は抜けの問題と切り分けること。まずは表で全体像を掴みましょう。
| 症状 | 主な原因 | 梶谷の処方 |
|---|---|---|
| 【打つ前〜瞬間】手元が上がらない | 攻めで崩せていない | 前に入り面技で崩す/上がらなければ逆胴 |
| 【打つ前〜瞬間】返し胴が読まれる | 返しのモーションがバレている | 返しと分からないように動作を隠す |
| 【打つ前〜瞬間】抜き胴が打ち負ける | 相手が完全に出てから打っている | 体が出る前に、誘いながら打つ |
| 【打った後】当たるのに切れが悪い | 手だけで打ち当たる時間が長い | 腰の回転で竹刀を一早く前へ抜く |
| 【打った後】逆胴で引っかかる | 腕だけで切り抜こうとしている | 左手を脇の下へ引いて抜く |
| 【打った後】後打ちを食らう | 下がって逃げている | できるだけ早く前に詰める |
【当たらない】打つ前〜打つ瞬間のつまずき
「そもそも胴が当たらない」という悩みは、ほとんどが打つ前の“作り”で決まっています。代表的な3つを番号で整理します。
- 手元が上がらない→受け身で待っているだけ。前にグググッと入り竹刀を制圧して面技を出せば、大人でも最後は手元が上がる。上がらない相手・三所隠しには逆胴
- 返し胴が読まれる→避ける瞬間に返しのモーションがバレている。「返し胴と分からないように」動作を隠す
- 抜き胴が面に打ち負ける→相手の体が完全に出てから打っている。体が出る前、面を打ち出す瞬間に胴へ入る
【一本にならない】打った後〜切れのつまずき
「当たっているのに旗が上がらない」——これは切れの問題です。手だけで打つと胴に当たっている時間が長くなり、一歩になりづらく、切れが悪く見えます。
直し方は、腰の回転を使って、打ってから竹刀を一早く胴の前へ抜くこと。詳しい原理は後述の原則③「腰の回転で切れが決まる」で解説します。逆胴で引っかかる場合は左手を脇の下へ引き、打った後に止まってしまう場合は早く前に詰める。この3点で「一本にならない」は大きく改善します。
技選択そのものが原因のケース
意外と多いのが、打ち方ではなく技の選択ミスです。たとえば「相手が面を途中でやめるから返し胴が打てない」というケース。これは打ち方の問題ではなく、返し胴を選んでいること自体がミスマッチです。
この場合は抜き胴へ切り替えましょう。自分から誘い出す抜き胴なら、相手が面を中止するかどうかに左右されにくくなります。「直す」の前に「選び直す」——これも立派な処方です。
- コテを強く打ちすぎる(次の胴が遅れる)
- 当てにいって手だけで打つ(切れが出ない)
- 打った後に後ろへ逃げる(後打ちの的になる)
「当てる」ことと「一本になる」ことは別物です。この違いをもっと根本から理解したい方は、こちらの記事が役に立ちます。

まとめると、当たらないは“作り”の問題、一本にならないは“抜け”の問題。自分の症状がどちらかを見極めれば、直すべき場所は一気に絞れます。
これらの直し方の根っこにあるのが、梶谷式の3つの原則です。次で体系立てて確認していきましょう。
梶谷式|胴技を貫く3つの原則と“作り”の考え方
ここからは、僕が試合で実際に意識している核心をお伝えします。5種類の胴すべてを貫く、3つの原則です。
胴技を貫く3つの原則
①前に行かない(唯一の例外が抜き胴)
②打った後の“抜ける角度”を技で変える
③腰の回転で切れ=一本が決まる
原則①『前に行かない』|唯一の例外が抜き胴
胴技の原理原則は、ひとことで言うと「前に行かない」です。前に行くと詰まる。返した後に前へ出てしまわないこと、これが基本のベースになります。
ただし、ここに唯一の例外があります。返し胴は前に行ってはダメ、抜き胴は前に行ってよい。矛盾しているようですが、理由を知ると納得できます。
返し胴は、相手が面に来るのを避けて返します。つまり相手の面はもう目と鼻の先、相手の体はすでに前に来ている状態。そこで自分まで前に行ったら、当然詰まってしまいます。だから返し胴は、その場で打つ。
一方の抜き胴は、相手を待つのではなく自分から誘い出す技。自分が前に行きながら胴に入り、相手の体が完全に出てくる前に打ちます。誘い方も違って、返し胴は張り合うぐらい前へグッと入って誘い、抜き胴は面を打ちやすい感じで誘う。「前に行くか行かないか」は、誘い方とセットで決まるんです。
原則②打った後の“抜ける角度”|返し胴=真右/抜き胴=斜め右前
打った後の抜け方も、技によって変えます。ここは意外と語られませんが、切れの見え方を大きく左右する部分です。
僕の場合、返し胴はほぼ真右(直角)に抜けます。返し胴は相手が前に来ている状態でその場打ちをするので、打った後に前へ行くとまた詰まって見えるんです。ほぼ直角に右へ抜けることで、引っかかりにくくなります。対して抜き胴は、若干斜め右前でOKです。
この真右抜けには、もう一つ効用があります。胴を打った瞬間に足を掛けてくる選手にも、真右に抜けることで対処できるんです。しかも切れがよく見えるので、しっかり切ったように映る。稽古で意識する価値が大きいポイントです。
原則③腰の回転で切れが決まる
返し胴・抜き胴のどちらでも命になるのが「腰の回転」です。手だけで打とうとすると、どうしても詰まったようになってしまいます。
切れを決めるのは、胴に当たってから竹刀が前に行くまでのスピードです。胴に当たっている時間が長いと、一歩になりづらく、切れが悪く見える。だから打ってから一早く、胴から竹刀を前へ持ってくる。これだけで胴の切れは激変します。
切れの正体:「当てる」から「切る」に変わる分かれ目は、当たった後に竹刀を前へ抜くスピード。ここは手の内(握りと冴え)の精度がそのまま出ます。
この「打突の冴え」は、手の内の使い方で大きく変わります。手の内を根本から鍛えたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

作りが勝負|相手のタイプで技を選ぶ最終判断
飛び込み胴とコテ胴は、打ち方ではなく“作り”が本体です。いかに面を打てるか、いかにコテを出しておけるか。ここが技の8割を決めます。
最終判断は相手のタイプで下します。整理すると——出ばな面を打ってくる相手には抜き胴・返し胴。打ってこず手元を上げる相手には飛び込み胴・逆胴。コテ返し面を狙う相手にはコテ胴。大人でも、前にグググッと入って竹刀を制圧し面技を出していけば、最後は手元が上がる相手が多いですよ。
一つの技に対して、複数の意識を持てた時。その技は本当の意味で「あなたの技」になります。まずは一つの原則から、稽古で反復してみてください。
梶谷彪雅
最後に、よくいただく質問へまとめてお答えしていきます。
剣道の胴打ちに関するよくある質問
返し胴と抜き胴、どっちを先に覚えるべき?
相手が面を打ち切ってくれるなら返し胴、反応が早い・面が得意な相手には抜き胴です。どちらも一長一短で、優劣ではなく「相手で選ぶ」のが結論。まずは自分から誘える抜き胴のほうが、相手の中止に左右されにくく扱いやすいです。
逆胴(左胴)は有効打突になりますか?
なります。右胴が基本ですが、左胴(逆胴)も正規の打突部位です。気勢・姿勢・刃筋・残心といった有効打突の条件を満たせば一本になります。三所隠しや、手元をよく上げる相手にとくに有効な技です。
飛び込み胴のタイミングは?
面を打つ“作り”で、相手の手元を上げさせた瞬間です。飛び込み胴は打ち方より作りが勝負。一歩入って「面が来る」と思わせ、手元が上がったところを胴で抜きます。まず普通の面を打っておくと、作りの説得力が増します。
当たっているのに一本になりません。なぜ?
手だけで打ち、腰の回転が使えていないのが典型です。胴に当たっている時間が長いと一歩になりづらく、切れが悪く見えます。腰の回転で、当ててから竹刀を一早く前へ抜くこと。当たっている時間を短くすると、切れがはっきり出ます。
手元を上げてくれない相手に胴は打てますか?
打てます。前にグググッと入って竹刀を制圧し、面技で崩せば、大人でも最後は手元が上がることが多いです。それでも上がらない相手や三所隠しには、逆胴を選びましょう。待つのではなく、自分から崩して開けさせるのがコツです。
引き胴のコツも知りたいです。
本記事は“出て打つ胴”に集中しています。引き胴・引き逆胴は間合いや体さばきが別物なので、専用ガイドで詳しく解説しています。鍔迫り合いからの一本を狙う方は、下記の引き胴完全ガイドをご覧ください。


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まとめ|胴技で試合の組み立ての幅を広げよう
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 相手のタイプで技を選ぶ(打ち切る相手=返し胴/反応が早い相手=抜き胴 ほか)
- 返し胴は前に行かない・真右に抜ける
- 抜き胴は腰の回転で竹刀を一早く前へ
- 飛び込み胴・コテ胴・逆胴は“作り”が勝負
- 当たらない=作りの問題/一本にならない=抜けの問題
大事なのは、稽古の中で何度も反復すること。返し胴なら「前に行かない」、抜き胴なら「腰の回転で竹刀を前へ持ってくるスピード」。一つの技に複数の意識を重ねることで、その技が“あなたの技”になります。
今回は“出て打つ胴”に絞りました。鍔迫り合いからの引き胴・引き逆胴については、専用の完全ガイドで意識していることをまとめています。あわせて読むと、胴の引き出しが一気に増えます。

胴だけでなく、剣道の技の全体像を体系的に把握したい方は、技一覧の完全ガイドをハブとして活用してください。

\胴の“切れ”は手の内と竹刀で変わります/
胴の切れは、手の内と打突の冴えで決まります。その冴えを最大限引き出すために、僕自身が振りやすさと手の内の伝わりにこだわって作ったのが「彪雅シリーズ竹刀」です。気になる方はのぞいてみてください。

胴技は、間合い・タイミング・読み合いという剣道の本質を詰め込んだ技です。だからこそ胴を磨くと、剣道全体のレベルが上がっていきます。それでは、稽古頑張ってくださいね。







