試合の9割は始まる前に決まる|ケの日を愛せ

「稽古は頑張ってるのに試合で勝てない」というお子さんを見ていませんか
試合会場からの帰り道、こんな言葉が思わず出てしまったことはありませんか。
あんなに練習したのに、なんで本番で出せないの…
気合を入れて送り出したのに、一回戦で負けてしまった…
お子さんもくやしい顔をしているし、親御さんも、なんと声をかけていいか分からず、もどかしい気持ちになる。この悩み、本当によく聞きます。
でも、私が日本一を9回いただいた経験から、ひとつハッキリ言えることがあります。
試合の9割は、試合が始まる前にすでに終わっています。そしてその「始まる前」とは、前日でも当日の朝でもなく、何の変哲もない、誰にも見られていない普通の稽古の日々のことです。
ケの日を大切にする人しか、晴れの日はやってこない
日本には昔から「晴れ(ハレ)の日」と「ケの日」という考え方があります。
晴れの日は、お祭り・結婚式・卒業式、そして試合の日のような「スポットライトが当たる特別な日」。一方のケの日は、仕事をして、学校に行って、稽古をして、ご飯を食べて、寝る——誰にも拍手されない、何の変哲もない普通の日です。
多くの人は、晴れの日ばかりを欲しがります。「勝ちたい」「成功したい」「認められたい」。でも、はっきり言います。人生を作っているのは、ケの日の方なんです。
「試合」とは、「試(ため)し合う」と書きます。これまで積み上げてきたものを試す場でしかない。積み上げていないものは、試す以前に存在しないんです。整理すると、こうなります。
| 晴れの日 | ケの日 | |
|---|---|---|
| いつ | 試合・大会・発表会 | 何でもない普通の日 |
| 特徴 | 拍手・歓声・スポットライト | 誰も見ていない・評価されない |
| 役割 | 積み上げを「試す」場 | 積み上げを「作る」場 |
| 真実 | 結果はここでは決まらない | 試合の9割は、ここで決まる |
ケの日を台無しにしてしまう3つの原因
稽古はしているのに結果が出ない子、ケの日を雑に過ごしてしまっている子には、だいたい以下の3つの特徴があります。
原因①|「やらされ稽古」になっている
正直に言います。私自身、小学生から中学1年生までは、完全にやらされる側の人間でした。「素振り1000本やりなさい」「休みの日は3000本やりなさい」——言われたことを、とりあえずこなす。それが稽古でした。
変わったのは、中学2年生で高森中学校に転校してから。「どうすれば強くなれるんだろう」と自分で考え、本気でやった瞬間から、成長スピードは全く別物になりました。「言われたからやる」稽古は、数をこなしても伸びにくいんです。
原因②|「どうせ自分なんて」と心のどこかで思っている
これは本当に大きな原因です。実は、講演会でいつも感じることがあります。
「強くなりたい人?」と聞くと、ほぼ全員が手を挙げます。ところが「本気で努力すれば全日本選手権に行けると思っている人?」と聞くと、ほとんど手が上がらないんです。
強くなりたいのに、自分がそこに行けるとは思っていない…どういうことでしょう?
心のどこかで「どうせ自分には無理」と思い込んでしまっているんです。この思い込みこそが、ケの日の全力を奪う最大の敵。「どうせ行けないんだから、ほどほどでいいか」と、無意識に手を抜いてしまうからです。
原因③|「誰も見ていない時間」に手を抜く
3つ目。これが一番見落とされがちな原因です。
以前、星子選手の話を聞いて、ハッとしたことがあります。星子選手は小学生の頃、自宅の車庫にカメラを設置し、打ち込み台を用意して、自分の動きを研究していたそうです。左足がきちんと引きつけられているか、引き技の軌道はどうか——誰に頼まれたわけでもなく、自分で自分を強くしようとしていた。
これこそ、誰も見ていない「ケの日」に全力を注ぐ姿だと思います。逆に、晴れの日だけ頑張る人は、ケの日に自分を裏切ってしまっている。サボる、逃げる、言い訳をする、「でも、でも」と言って何もしない。そして晴れの日だけ、突然ヒーローになろうとする。でも現実は、日々の積み重ねでしかないんです。
解決策|ケの日を「晴れの日」のつもりで生きる
では、どうすればケの日を大切にできるのか。3つの原因をひっくり返せば、そのまま解決策になります。
この3つが揃った瞬間、ケの日は「試合の準備」ではなく「試合そのもの」に変わります。そして晴れの日は、その積み重ねの結果として、自然と訪れてくれるようになります。
今日からできる具体アクション|ケの日の3原則
明日からではなく、今日からです。お子さんに伝えてあげてください。難しいことは1つもありません。
3つも4つも必要ありません。1つでいい。「今日は足さばきだけ意識する」——これだけで、稽古が『目的のある時間』に変わります。
「今日はできた」「今日はダメだった」だけでOKです。この小さな30秒の習慣の積み重ねが、ケの日の質を大きく変えていきます。
スマホでかまいません。自分の素振り、打ち込み、どれか1本。星子選手のように自分の姿を自分で見るという経験が、剣道を「やらされるもの」から「自分のもの」に変えてくれます。
まとめ|晴れの日を生きたいなら、ケの日を愛せ
今日は少し、精神的な話になりました。でもこれは、私が日本一を9回いただく中で、技術よりも、戦術よりも、ずっと大事だと実感してきたことです。
皆さんのお子さんは、昨日、どんな1日を過ごしましたか?誰にも評価されない努力、誰にも気づかれない挑戦——もしお子さんが「今週も頑張った」「昨日も全力でやった」と自分で言える日があるなら、それはもう、人生で最も重要な1日になっています。
正直に言うと、僕がこうして続けているVoicyも、まだ「晴れの日」とは程遠いと思っています。いつ晴れの日になるのか分かりません。それでも、この「なんでもない日」を必死に積み重ねていく——その先にしか、晴れの日はないと信じています。
晴れの日は、ケの日を大切にする人にしか訪れません。次の試合のために。次の挑戦のために。次の夢のために。今日という、なんでもない日を、全力で生きていきましょう。その積み重ねは、必ず最高の晴れの日に連れていってくれます。
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