剣道の切り返し完全ガイド|やり方・元立ちの受け方を日本一が解説

切り返しについて、こんな迷いはありませんか。
- 毎回やっているけれど、何のためにやっているのかが曖昧
- きつくて続かない。息が上がって最後まで振り切れない
- 元立ちをやることになったが、どう受ければいいのか分からない
- 20年やってきて、これで合っているのか自信がない
切り返しは、剣道でいちばん多く行われている稽古のひとつです。それなのに、目的と受け方まで整理して語られることは、あまり多くありません。
この記事では、切り返しの目的・正しいやり方・元立ちの受け方・応用までを一本にまとめました。
後半では、僕が実際に強豪校へお邪魔して体験してきた「水平切り返し」や、個別指導で結果が出ている「片手切り返し300本」もお伝えします。
- 千葉周作が残した打ち込み十徳=切り返しで身につく10の力
- 切り返しの基本のやり方と、意識する順番
- 元立ちの受け方。打つ側を伸ばす受け方とは
- きつくて続かないときに、本当に見直すべきところ
- 小牛田農林高校の水平切り返し(僕が20年で初めて出会った稽古)
- 左手が育つ片手切り返し300本のやり方
剣道の切り返しとは|まず目的から整理します
切り返しは、正面を打ってから左右面を連続で打ち、また正面を打つ、という一連の稽古です。多くの道場で、面をつけたあとの最初のメニューとして行われています。
ただ「準備運動」だと思っていると、効果が半分以下になります。
切り返しは、剣道に必要な要素をひとまとめに鍛えられる稽古です。だからこそ、江戸時代から今日まで残っています。
それを最も端的に示したのが、北辰一刀流の開祖・千葉周作が残した「打ち込み十徳」という教えです。次の章で、10項目すべてを見ていきます。
剣道の基礎を支える千葉周作の教え
千葉周作(ちば しゅうさく)は、江戸時代後期の剣術家で、北辰一刀流の開祖です。その千葉周作が、打ち込み稽古で得られる効果を10項目にまとめたものが「打ち込み十徳」です。
200年近く前の言葉ですが、いま読んでも驚くほど的確です。一つずつ、現代の稽古に置き換えて見ていきます。
打ち込み十徳の10項目とは
まずは、千葉周作先生が示した10の項目をご紹介します。
- 技烈しくなること
- 打ち強くなること
- 息合い長くすること
- 腕の働き自由になること
- 身体軽く自在になること
- 寸長の太刀自由に使わるること
- 臍下おさまり体崩れざること
- 眼明らかになること
- 打ち間明らかになること
- 手の内軽く冴え出ること
少し難しい古い言葉もありますが、一つずつ現代的に解説していきます。
技術向上に関する効果(1〜4項目)
1. 技烈しくなること
これは相手に近づいたらためらわずに連続して技を出していく能力を指します。
昔の武術では、相手を倒すまでしっかりと矢継ぎ早に技を出していく必要がありました。現代剣道でも、攻めの意識を持って積極的に技を仕掛けていく姿勢は非常に重要です。
切り返し練習を通じて、この激しさを身につけることができます。
2. 打ちが強くなること
これは私がよくお話しする内容ですね。
竹刀で打つときに、しっかりと強さが相手に伝わらなければなりません。切り返しの中で何回も打つことで、体が鍛えられていきます。
ただ力任せに打つのではなく、正しい打突部位に確実に当てる技術も同時に身につけることが大切です。
3. 息合い長くすること
これは息が長く続くようにすることという意味です。呼吸法は剣道において非常に重要な要素の一つです。
私の経験では、吐く息を長く、吸う息を短くすると力が入りやすく、気が抜けている瞬間が少なくなります。
切り返しの中で「メン、メン、メン」と息を長く使っていくことで、苦しい状況でも息をコントロールする練習ができます。
4. 腕の働き自由になること
剣道の竹刀は大きく振りかぶってから打つのが基本動作です。小さい動きだけではなく、強い打ち込みは大きい動作から生まれます。
肩や腕を大きく使って竹刀を振ることで、正しい打突が身についていきます。大は小を兼ねるの考え方で、大きく使うことで小さい動きも自在になります。
身体能力向上に関する効果(5〜7項目)
5. 身体軽く自在になること
切り返しは、前後の足さばきと打突を同時に行う稽古です。連続して行うことで、体全体を思い通りに動かす感覚が育っていきます。
足だけ、手だけが動くのではなく、全身が一つのまとまりとして動くようになります。
6. 寸長の太刀自由に使わるること
「寸長(すんなが)の太刀」とは、自分にとって少し長い竹刀のことです。
切り返しで振り込んでおくと、多少長い竹刀・重い竹刀でも扱えるようになります。普段より重いものを扱えるようになれば、普段の竹刀は当然軽く感じます。
7. 臍下おさまり体崩れざること
臍下(せいか)とは、へその下、いわゆる丹田のあたりです。ここが安定すると、打っても打たれても体勢が崩れなくなります。
切り返しは連続して打つため、途中で体幹が緩むとすぐに姿勢が乱れます。崩れないように保ち続けること自体が、そのまま稽古になっています。
精神・感覚向上に関する効果(8〜10項目)
8. 眼明らかになること
連続で打つ中でも、相手をきちんと見続ける力のことです。
苦しくなると、人は視線が落ちます。切り返しで息が上がった状態でも相手を見ていられるかどうかは、そのまま試合の終盤に効いてきます。
9. 打ち間明らかになること
打ち間(うちま)とは、自分が打てる距離のことです。
切り返しでは、前に出ながら打ち、後ろに下がりながら打ちます。距離が刻々と変わる中で正確に打つことで、「ここなら届く」という感覚が体に入っていきます。
10. 手の内軽く冴え出ること
これは握る力の使い方を指します。
昔の先生が巻き藁を刀でスパッと切るとき、肩や手に力を入れずに非常にきれいに切っていたそうです。その秘密は手の内の使い方にあり、切り返しでその技術を覚えることができるとされています。
10項目を並べてみると、技術・体力・呼吸・目・間合い・手の内と、剣道に必要なものがほぼ全部入っています。切り返しが200年残ってきた理由が、ここにあります。
切り返しの基本のやり方|意識する順番があります
ここからは実際の動きです。道場によって本数や形が違うので、所属の先生の指導が最優先という前提でお読みください。
基本の流れ
- 正面を1本打ちます
- そのまま体当たり、または間合いを詰めます
- 左右面を連続で打ちます(前進しながら4本、後退しながら5本など、道場により異なります)
- 間合いを取り、もう一度正面を打ちます
- 打ち抜けて残心を取ります
意識する順番は「刃筋→大きさ→速さ」
いっぺんに全部を直そうとすると、どれも中途半端になります。順番があります。
| 順番 | 意識すること | 確認の仕方 |
|---|---|---|
| 1 | 刃筋(はすじ)が通っているか | 打った音が澄んでいるか。ベチッと鈍い音は刃筋が立っていません |
| 2 | 大きく振れているか | 肩から使えているか。肘から先だけで振っていないか |
| 3 | 速さと連続性 | 最後の1本まで振りが小さくならないか |
左右面の角度
左右面は、右斜め上から左斜め45度へ、左斜め上から右斜め45度へ振ります。真上から振り下ろすと面金に当たり、寝かせすぎると刃筋が外れます。
元立ちの受け方|打つ側を伸ばす受け方があります
切り返しの記事で、いちばん語られていないのがここです。
元立ち(もとだち)は、ただ竹刀を出して受ければいいわけではありません。受け方ひとつで、打つ側の伸び方が変わります。
千葉周作は「受け八徳」も残しています
打ち込み十徳と対になる形で、千葉周作は受ける側の効能も8つ残しています。
- 心静かにおさまること
- 眼明らかになること
- 敵の太刀明らかなること
- 身体自由になること
- 体堅固になること
- 手の内締まること
- 受け方明らかなること
- 腕丈夫になること
受ける側にも8つの効能がある——つまり元立ちは、打たせてあげる役ではなく、自分の稽古でもあるということです。
受け八徳の一つひとつは、別の記事で詳しく解説しています。

受けるときに意識したいこと
| 項目 | 考え方 |
|---|---|
| 受ける高さ | 打つ側が正しい刃筋で振り切れる位置に出します。低すぎると打つ側が竹刀を寝かせてしまいます |
| 間合い | 打つ側が一歩で届く距離を保ちます。詰まりすぎると振りが小さくなります |
| 受ける強さ | 受け止めるのではなく、打たせて流す意識です |
| 下がる速さ | 打つ側の足の速さに合わせます。速すぎると届かず、遅いと詰まります |
子どもや初心者の元立ちをするとき
相手が子どもや初心者の場合は、次の点を変えます。
- 受ける位置を相手の振れる高さに合わせて下げます
- 本数を減らし、1本ずつ区切って受けます
- 速さより刃筋と大きさを優先させます
- 打てたときにその場で伝えます(終わってからでは何が良かったか本人が分かりません)
切り返しがきつくて続かない|見直すべきは体力ではありません
「切り返しがきつい」という相談は本当に多いです。
ただ、きつさの原因が体力だとは限りません。打ち方の問題で、必要以上に疲れているケースが多くあります。
息が上がる本当の理由
| 症状 | 考えられる原因 | 見直し方 |
|---|---|---|
| 途中で息が続かない | 吸う息が長い | 吐く息を長く、吸う息を短く。十徳の3番がそのまま答えです |
| 腕だけが異様に疲れる | 肩が使えず、肘から先で振っている | 大きく、肩から振ります |
| 最後の数本で振りが小さくなる | 最初から速さを出しすぎている | 全部を同じ大きさで振れる速さに落とします |
| 足がついてこない | 打ちと足が別々に動いている | 足さばきだけを切り出して練習します |
足さばきが原因になっているケースは、意外と多いです。

呼吸を切らさないコツ
切り返しの中で「メン、メン、メン」と声を出しながら、息を長く使っていきます。声を出すこと自体が、吐く息を長くする練習になります。
水平切り返し|20年やってきた僕の常識が壊れた稽古
ここからは、僕が実際に体験してきた話です。
宮城県の強豪・小牛田農林高校さんにお邪魔したとき、「水平切り返し」という稽古を体験させていただきました。正直に言うと、20年剣道をやってきて初めて聞いた名前です。
結論から言うと、「ある程度できている」という自分の思い込みを、完全に粉砕されました。
普通の切り返しとの違い
| 項目 | 普通の切り返し | 水平切り返し |
|---|---|---|
| 振りの方向 | 右斜め上→左斜め45度/左斜め上→右斜め45度 | 真横(床と水平)に振るイメージ |
| 打ち方 | 上から下に振り下ろす | 真横から打ち抜く |
| 振り抜く方向 | 斜め下方向 | 水平のまま外側へ抜く |
| 主な目的 | 基本動作・体力づくり | 手首の返しと、裏面・左抜け胴への応用 |
まず竹刀を持たずに、手の軌道を覚えます
- 「いただきます」の合掌の形で、親指を上に向けます
- 両手を伸ばして、親指を真右に倒します
- そのまま右側に水平に抜きます
- 頭の後ろを通して、親指を左側に返します
- 左側に水平に当てます
文字で書くとシンプルに見えますよね。でも、実際にやってみると想像以上にできないんです。
すり足と合わせた瞬間、上半身がぶれる
手の動作だけなら、ゆっくりやればできます。ところがすり足と組み合わせた瞬間、後ろから見ると上半身が左右にぶれていると指摘されました。
自分ではまったく気づいていませんでした。
新しい動作と組み合わせた瞬間に、できていたはずの基本が崩れる。これが今回いちばんの気づきでした。
面をつけたら、難しさが10倍になりました
面をつけると、まず面垂れが邪魔をして振り上げにくくなります。さらに連続で振らないといけないので、スピードを上げると上半身のブレが一気に増えます。
具体的に指摘されたのが、左側の抜け方でした。
| 状態 | 判定 | |
|---|---|---|
| 右側 | 水平に当てて、水平に抜けている | ◯ |
| 左側 | 当てるときは水平。でも抜くときに斜め上へ流れる | × |
当たった後も水平に抜く。この一言だけで意識が変わるはずなのに、20年間染みついた斜め抜きの癖が、完全には抜けないんです。本当に難しい。
胴はできるのに、面ができない
面と胴の切り返しもやらせてもらったのですが、面白いことに胴のほうは意外と水平で抜けていると言われました。逆に面は斜めに流れてしまう。
水平切り返しが活きる技
| 技 | 水平切り返しが活きる場面 |
|---|---|
| 裏面 | 左手首の返し。深く避ける相手にも届くようになります |
| 左抜け胴 | 水平に強く振り抜く打突力の確保 |
| 逆胴 | 横から打つ動作の精度 |
| 回し技全般 | 体軸を保ったまま竹刀を回す感覚 |
普通の切り返しの感覚で裏面を打つと、相手が深めに体を避けた瞬間、竹刀が届かなくなります。でも水平切り返しの感覚で打つと、相手が真横に避けても竹刀が刃筋正しく入っていくんです。
小牛田農林の伝統技である左抜け胴も練習させていただきました。返し胴ではなく、自分から飛び込んで左側に抜ける胴打ちです。
この左抜け胴は、普通に打つと打突が軽くなりがちです。でも小牛田農林の選手たちは本当に強い音で打っていました。水平切り返しで「水平に強く振り抜く」体の使い方が染み込んでいるからだと腑に落ちました。
地稽古で、その成果を体で受けました
地稽古に入った最初、僕は正直ちょっと気を抜いて入ってしまったんです。そうしたら相手から「フェイント→裏面」のような技を食らいました。
普段の僕なら、深めに避けるから食らわないと思っていた技です。でも完全に入れられました。
深く避けても届く、強く打てる、刃筋正しく入る。この3つが同時に成立する技を、小牛田農林の選手は当たり前に持っていました。
片手切り返し300本|左手が育つと、竹刀が軽くなります
もうひとつ、実際に効果が出ている方法をお伝えします。
僕自身、全日本選手権予選前・全日本都道府県大会前・国体予選前は、「重い竹刀と軽い竹刀を交互に1000本」という定番メニューで筋力を上げていました。
でも最近、あの1000本より竹刀が軽く感じる「300本の素振り」を見つけてしまいました。それが片手での切り返し素振りです。
彪進会や個別指導でも実際に取り組ませていて、結果が出ている方法です。
なぜ両手の素振りだけでは足りないのか
竹刀は両手で扱う道具です。両手で振ると、使いやすい方の腕、ほとんどの人は右腕に自然と力が入ります。これは無意識なので、自分では気づきにくいところです。
でも剣道で本当に大事なのは左手です。左手で竹刀を操作し、右手は添えるだけ。これが理想です。
指導現場で毎回はっきり見える現象
彪進会や個別指導で、必ず起きることがあります。
| 指示 | 起きること |
|---|---|
| 「右手だけで振ってみて」 | 利き腕なので、ほとんどの子が速く振れます |
| 「左手だけで連続で振ってみて」 | 連続で振れない子が、本当にたくさん出てきます |
つまり多くの子が右手の力に頼って打っていて、肝心の左手が育っていません。だから、右手より少しだけ左手を強化する意識を持つだけで、打突は見違えます。
やり方|1セット30本×10セット
切り返しと同じ要領で、次の流れを1セットにします。
- 正面打ち → 左手だけで左右面9本 → 正面打ち
- 正面打ち → 右手だけで左右面9本 → 正面打ち
- 正面打ち → 両手で左右面9本 → 正面打ち
これで1セット30本。10セット繰り返すと合計300本になります。
なぜ素振りではなく「切り返し」の形にするかというと、左右面という手首の返しが必要な動きだからです。まっすぐ振り下ろすだけでは、左手の弱さが表に出てきません。
強豪校の切り返しは、何が違うのか
長野県の強豪・佐久長聖高校さんの稽古に参加させていただいたときの話です。
男子団体・女子団体でインターハイ出場、さらに1年生の選手が個人戦で県を制するという快挙もあったチームです。
切り返しの中に、技が全部入っていました
佐久長聖さんの切り返しは独特でした。
- 普通の切り返しに加えて、面を打って切り返し
- 最後の面のあとに小手、突き、胴の切り返し
- 逆胴で決めて抜ける
- すると元立ちが近づいてきて、今度は元立ちが引き技を打つ
切り返しの中に、引き技・突き技・逆胴まで組み込まれているんです。
技の練習も「面だけ」がありません。面→小手面→小手面、そのあと元立ちがついてきて引き技。すべてがいろんな組み合わせで成り立っています。
止まる隙がない
面をつけてからは打ち込みを20本。全力でやるのはもちろん、振り返り際に両サイドの生徒さんがいて、遅いと背中を押されます。振り返った瞬間に、次の準備を早くする意識づけです。
素振りも30分ほど。正面素振り、左右面素振りなどを100本単位で振っていき、途中で先生の「やり直し」が入って、合計で600本ほどになりました。
30分、休憩なしで間髪入れず、次々次々。気を抜く隙がなく、この30分で体力の9割を持っていかれ、腕はパンパンになりました。
持ち帰れること
強豪校のメニューをそのまま真似する必要はありません。ただ、考え方は今日から取り入れられます。
- 切り返しを単体で終わらせず、次の技につなげる
- 1本ごとに区切らず、「次々」の意識で続ける
- 振り返り際の次の準備を速くする
- 素振りを「目覚めのため」から「追い込むため」へ切り替える
僕も毎日素振りをルーティンにしていますが、朝起きて一発目にやるので、体が温まった頃にやめてしまっていました。自分の稽古を見直すきっかけになりました。

年代・レベル別|切り返しの組み立て方
同じ切り返しでも、誰がやるかで狙いどころが変わります。
| 対象 | 優先すること | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 小学生・初心者 | 刃筋と大きさ。1本ずつ区切って確認します | 本数を追うこと。崩れた形が固まります |
| 中学生 | 刃筋を保ったまま連続性を伸ばします | 速さだけを競うこと |
| 高校生・強豪志向 | 技を組み込んだ切り返しで試合につなげます | 切り返しを準備運動で終わらせること |
| 大人・再開組 | 呼吸と足さばき。無理に本数を増やしません | 若い頃の本数を基準にすること |
一人でもできる切り返しの練習
元立ちがいなくても、切り返しの要素は練習できます。
- 空間打突で左右面の刃筋だけを確認する
- 片手切り返し300本(前の章のとおり、約5分です)
- 足さばきだけを切り出して、前進・後退の連続を確認する
- 鏡の前で、左右の抜け方が対称かを見る
特に4つ目は効きます。僕自身、水平切り返しで「右はできているが左ができていない」と指摘されるまで、左右差にまったく気づいていませんでした。

切り返しで自分をチェックする5項目
毎回すべてを気にするのは大変なので、日替わりで1つずつ見るのがおすすめです。
| チェック項目 | 見るところ | 崩れているサイン |
|---|---|---|
| 刃筋 | 打った音 | ベチッと鈍い音になる |
| 振りの大きさ | 肩から使えているか | 肘から先だけで振っている |
| 呼吸 | 吐く息の長さ | 途中で息継ぎが増える |
| 姿勢 | 臍下(丹田)が安定しているか | 打つたびに上体が前後する |
| 左右差 | 左右の抜け方 | 片側だけ斜めに流れる |
この5つ目の左右差が、いちばん自分では気づけません。動画を撮るか、後ろから見てもらってください。
現代への応用と実践のポイント
十徳と、ここまでお伝えした3つの稽古を、実際の稽古にどう配置するかを整理します。
| 目的 | 使う切り返し | タイミング |
|---|---|---|
| 基本づくり・全身の連動 | 通常の切り返し | 面をつけた直後 |
| 呼吸と体力 | 通常の切り返しを本数多めで | 稽古の中盤〜終盤 |
| 手首の返し・裏面と胴 | 水平切り返し | 基本動作の一部として、少量から |
| 左手の強化 | 片手切り返し300本 | 自宅や自主練。約5分で終わります |
| 試合への接続 | 技を組み込んだ切り返し | パターン稽古として |
剣道の切り返しに関するよくある質問
- 切り返しは何本やればいいですか?
- 道場や指導者によって異なります。本数より、最後の1本まで振りが小さくならないことを基準にされることをおすすめします。振りが崩れた状態で本数を重ねても、崩れた形が身についてしまいます。
- 切り返しがきついのは体力不足でしょうか?
- 体力だけとは限りません。吸う息が長い、肩が使えず肘から先で振っている、最初から速さを出しすぎている、といった打ち方の問題で必要以上に疲れているケースが多くあります。まずは吐く息を長く、吸う息を短くを試してみてください。
- 元立ちのとき、どのくらいの強さで受ければいいですか?
- 受け止めるのではなく、打たせて流す意識です。受ける高さは、打つ側が正しい刃筋で振り切れる位置に出します。低すぎると、打つ側が竹刀を寝かせてしまいます。
- 水平切り返しはどこで習えますか?
- 宮城県の小牛田農林高校さんの伝統練習として教えていただきました。剣道時代か剣道日本のどちらかで取り上げられたことがあるそうです。一般的に広く行われている稽古ではないため、まずは竹刀を持たずに手の軌道から試してみてください。
- 片手切り返しは何歳から大丈夫ですか?
- 年齢の基準は設けていませんが、竹刀を落とさずに片手で保持できることが前提です。難しい場合は本数を減らすか、短い竹刀や木刀ではなく素手の素振りから始めてください。周囲の安全確認も必ず行ってください。
- 切り返しと打ち込み稽古は何が違いますか?
- 切り返しは正面と左右面を決まった形で連続して行う稽古で、打ち込み稽古は元立ちが示した打突部位を打っていく稽古です。千葉周作の「打ち込み十徳」は、この両方に通じる効能をまとめたものと考えられています。
まとめ|切り返しは、いちばん多くやる稽古だからこそ
切り返しは、剣道でいちばん回数の多い稽古のひとつです。だからこそ、その一本一本の質が、そのまま実力の差になっていきます。
- 千葉周作の打ち込み十徳には、剣道に必要な要素がほぼ全部入っています
- 意識する順番は刃筋 → 大きさ → 速さ。速さを最初に追わないこと
- 元立ちにも受け八徳があります。受け方で打つ側の伸びが変わります
- きつさの原因は体力とは限りません。呼吸と振り方を先に見直します
- 水平切り返しは裏面と左抜け胴に、片手切り返し300本は左手の強化に効きます
20年やってきた僕でも、小牛田農林高校さんで常識を壊されました。できているつもりの基本ほど、外から見てもらう価値があります。
一緒に、積み上げていきましょう。
あわせて読みたい記事
元立ち側の効能については、こちらで詳しく解説しています。

剣道の基礎基本の全体像は、こちらにまとめています。

素振りの種類とやり方はこちらです。


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