剣道の足さばきを速くする5つの練習ドリル|全国8冠の梶谷が解説

この記事は、剣道の足さばきを速くする・試合で使うための「5つの実践ドリル」を、手順に落とし込んだ練習メニューです。狙い・やり方・回数の目安・つまずいたときの対処まで、そのまま今日の稽古で回せる形でまとめました。
足さばきは、知識を増やすだけでは速くなりません。種類や理屈だけ詳しくなって「頭では分かるのに、いざ動くと足が固まる」状態が、試合で一番差をつけられます。だからこそ、体に入れる練習が必要です。
- 足さばきが遅くて、いつも相手に先を取られてしまう
- 種類や理屈は知っているのに、いざ動くと足が固まる
- 試合になると足が止まって、打ち切れずに終わる
今回の記事で学べることは、下記のとおりです。
- 足さばきを速くする3つの考え方(左足重心・引きつけ・浮かせない)
- 日本一9回の梶谷が実践する5つのドリルの手順(打つ前・打った後・応用)
- それぞれの狙い・やり方・回数の目安・つまずき対策
- 5つをどう組み合わせて回すか(1回分のメニュー例)
- 畳や自宅でもできるか、毎日どれくらいやればいいか
先に結論だけお伝えすると、足さばきの速さは「左足重心を保ち、素早く引きつける」ことを軸に、5つのドリルで作れます。筋力よりも、重心の置き方から変えていくのがコツです。
「先に自分に合ったドリルだけ知りたい」という方は、次の悩み別・おすすめドリル早見表から気になるドリルへジャンプしてください。
彪雅KENDO合同会社
代表 梶谷 彪雅
大分県出身。高森中学校、九州学院高等学校、明治大学卒業。剣道の全国大会で9回の優勝を経験。現在は指導者として、剣道セミナー「彪進会」を全国で1年以上にわたり開催しています。
結論|あなたの悩み別・おすすめ足さばきドリル早見表
まず結論からお伝えします。足さばきの速さは左足重心を保ち、素早く引きつけるだけで変わりやすくなります。あとは、自分の悩みに合わせて目的別にドリルを選ぶだけです。
下の早見表で、自分の悩みに近い行の「詳しく」からドリルへジャンプできます。
| あなたの悩み | おすすめドリル | 詳しく |
|---|---|---|
| 打つ前に居着く・足が止まる | ドリル1 左足重心 | 見る |
| 前へは出られるが後退が遅い | ドリル2 前後どちらも | 見る |
| 打った後に置いていかれる | ドリル3 打った後の抜け | 見る |
| 切り返し・引き技の瞬発力がない | ドリル4 反復縦跳び | 見る |
| 左右・斜めの動きに対応できない | ドリル5 円の足さばき | 見る |
迷ったら、まずは「打つ前」のドリル1から。ここが全部の土台になります
自分に合うドリルの見当がついたら、まずは「速くする考え方」を押さえてから、実際のドリルに入っていきましょう。
剣道の足さばきを速くする3つの考え方|左足重心・引きつけ・浮かせない
ドリルに入る前に、土台となる考え方を整理します。足さばきの速さは、筋力よりも重心の置き方で決まりやすいです。押さえるべきは、次の3つです。
- ①左足に重心を残す
-
右足を浮かせて、いつでも前へ蹴り出せる状態をつくる。居着かないための基本
- ②引きつけを速くする
-
右足重心の瞬間に、左足を素早く引きつける。次の一歩の初速がここで生まれる
- ③体を浮かせず低く運ぶ
-
上下動を減らして、重心を前へまっすぐ運ぶ。無駄な動きでスピードを消さない
考え方①:左足に重心を残す(右足を浮かせて居着かない)
人の体の構造上、右足を浮かせると、ほぼ左足に重心が乗ります。左足に重心があると、そのまま前へ蹴り出せるので、蹴り出しの初速が速くなりやすいんです。
ポイント:足さばきが遅い人ほど、右足に体重を預けている時間が長い傾向があります。まずは「右足を浮かせる」だけを意識してみてください。
逆に、前の攻防で右足に体重が残ったままだと、そこで居着いてしまいます。居着けば当然、初速は出ません。ここが最初の分かれ道です。
考え方②:引きつけを速くする(次の一歩の初速をつくる)
左足重心を保つには、右足を送ったあとの引きつけが欠かせません。引きつけが遅れると、次の一歩がすぐ出せず、動き出しがワンテンポ遅くなります。
引きつけは左足だけの仕事に見えて、実は右足や上半身のリズムも関係します。ここを深掘りしたい方は、リズムトレーニングの記事が参考になります。

考え方③:体を浮かせず低く運ぶ(上下動でスピードを消さない)
3つ目は、体を上下に揺らさず、低い姿勢のまま重心を前へ運ぶことです。上下動が大きいと、そのぶん前へ進むエネルギーが逃げて、動きが遅く見えてしまいます。
速さは「大きく動く」ことではなく、「無駄なく最短で運ぶ」ことから生まれます。まずは重心をブレさせないことを意識してみてください。
なお、足さばきの種類や、送り足・すり足の違い・基本は、この記事では扱いません。定義や種類の整理は、下の親記事で詳しく解説しています。

考え方が入ったら、いよいよ日本一9回の梶谷が実際にやっている5つのドリルへ進みましょう。
なぜ試合で足が止まるのか|足さばきが遅くなる3つの原因
ドリルの前に、そもそもなぜ試合で足が止まるのかを整理しておきます。原因が分かれば、どのドリルを回せばいいかが見えてきます。主な原因は3つです。
- 右足に体重が乗る時間が長く、居着いてしまう
- 前にしか動けず、後ろへの切り替えが遅い
- 知識はあるのに、体で再現できていない
原因①:右足荷重で居着く
前の攻防で右足に体重が乗り続けると、そこで足が固まります。攻め合いの緊張で、つい右足に体重を預けてしまう人は要注意です。これは後述のドリル1(左足重心)で解消していきます。
原因②:前後の切り替えが遅い
前へ出るのは得意でも、相手が入ってきた瞬間に後ろへさばくのが遅いと、そこを打たれます。前だけでなく後ろへの初速も必要です。これはドリル2とドリル4で鍛えます。
原因③:「分かる」と「動ける」は別物
僕は全国で彪進会を1年以上開催してきて、はっきり感じることがあります。それは知識はあるのに、体で再現できていない人がとても多いということです。
彪進会の参加者に「意識するポイントは?」と聞くと、「馬のような感じです」「左足に常に体重を乗せることです」とすぐ答えられます。反復で体に入っているからです。
一方で、動画をたくさん見ているだけの方は、同じ質問にうまく答えられないことが多いんです。この差は才能ではなく、反復で体に入れたかどうかの差だと感じています。
原因が分かれば、あとは対応するドリルを回すだけです。次の章で、5つのドリルを手順にして紹介します。
日本一9回の梶谷が実践する剣道の足さばき5つのドリル|狙い・やり方・目安
ここからが本題です。打つ前(ドリル1・2)、打った後(ドリル3)、応用(ドリル4・5)の順で紹介します。各ドリルは「狙い → やり方 → 回数の目安 → つまずいたら」で統一しています。
- ドリル1|常に左足重心を保つ(打つ前)
- ドリル2|前後どちらにも動ける足の使い方(打つ前)
- ドリル3|打った後の足さばき・馬のように抜ける(打った後)
- ドリル4|反復縦跳びで前後の瞬発力(応用)
- ドリル5|円の足さばきで左右・斜めに対応(応用)
ドリル1|常に左足重心を保つ練習法(打つ前)
狙い:居着きをなくし、いつでも前へ蹴り出せる左足重心を体に染み込ませることです。すべてのドリルの土台になります。
やり方は次の手順です。
- その場ですり足を送る
- 右足が着地する瞬間に、右足を浮かせる
- 左足を引きつける瞬間も、右足を浮かせておく
- 常に左足に重心が乗った状態を維持する
右足を浮かせば、人の構造上ほぼ100%左足に重心が乗ります。前の攻防で右足に体重が乗っている時間が長い人、居着きやすい人ほど、この練習がおすすめです。
梶谷彪雅
回数の目安:その場すり足を10〜20歩、2〜3セットほど(あくまで一例・目安です)。数より、左足に乗れているかの正確さを優先してください。
つまずいたら:右足に体重が残る・居着くと感じたら、ランジ(右足を前に出した状態)から左足を引きつけて右足を浮かせる、分解練習に戻すと感覚をつかみやすいです。次のドリル2とセットで行うのがおすすめです。
ドリル2|前後どちらにも動ける足の使い方(打つ前)
狙い:前後どちらにも初速を出せる「真ん中重心」を作ることです。ドリル1の左足重心だけだと前には飛べますが、後ろへは飛べません。そこを補うのがこのドリルです。
やり方は次の手順です。
- 構えで、左足は前へ蹴る意識を持つ
- 同時に、右足は後ろへ蹴る意識を持つ
- 力を左足と右足の真ん中に集める
- 右足を浮かせば前、左足を浮かせば後ろ、を交互に確認する
剣道は右足が前、左足が後ろにあります。この意識を持つと、右足を浮かせば前、左足を浮かせば後ろへ、瞬時に動ける状態が作れます。
回数の目安:前後ランダムの号令で20〜30秒を数本ほど(一例・目安)。前へも後ろへも、同じ初速で出られるかを確認しながら行ってください。
つまずいたら:左足重心だけで後退が遅い場合は、ドリル1とセットで実施してください。ドリル1だけだと後ろに飛べないため、この2つは打つ前の「対」として練習するのが基本です。
この「真ん中重心」が実戦でどう効くかは、第73回全日本剣道選手権の決勝が分かりやすい例です。星子啓太選手が優勝したこの試合では、國友錬太朗選手が入ってくる瞬間に後ろへさっとさばき、攻め返す瞬間には前へ間合いを詰めていました。下の動画で間合いの攻防を確認してみてください。
立ち上がりの間合いの攻防に注目すると、前後どちらにも動ける「真ん中重心」のイメージがつかみやすくなります。

ドリル3|打った後の足さばき(馬のように抜ける/右足太ももで前へ飛ぶ)
狙い:打突のあとにスピードを落とさず抜けること、そして面や胴の引き寄せを速くすることです。ドリル1・2が「打つ前」の足づくりなら、これは「打った後」の動きです。
やり方は次の手順です。
- 踏み込む
- 左足で止めず、馬のように前へ加速し続ける
- 別メニュー:ランジの状態から、右足の太ももの力で前へ飛ぶ
「右足を左足で抜くな」を全部の打突で守ると、スピードが完全に落ちてしまいます。だから打った後は、左足を抜いて前へ加速していい。馬が走り出したら前へ加速していく、あのイメージです。
梶谷彪雅
右足の太ももで前に飛ぶ感覚をつかむと、面を打った後や胴を打った後の引き寄せも速くなりやすいです。踏み込みそのものの土台を固めたい方は、踏み込みの記事もあわせてどうぞ。

回数の目安:ランジから前へ飛ぶ動きを8〜10回、2〜3セットほど(一例・目安)。打った後に足を運ぶ方向を、体で覚えることを優先してください。
つまずいたら:踏み込みのあとに左足でブレーキをかけたり、右足でストップしてしまうと、せっかくのスピードが消えます。抜ける方向へ体を運ぶ意識に切り替えましょう。足から手へ打突力をつなげる素振りも、下の記事が参考になります。

ドリル4|反復縦跳びで前後の瞬発力を鍛える(応用)
狙い:前後の重心切り替えの瞬発力を鍛えることです。引き技のあとの構え直しや、面を打って抜けて振り返る動きに直結します。ドリル2と同じく「前後の初速づくり」のペアだと考えてください。
やり方は次の手順です。イメージは反復横跳びの縦バージョンです。
- 両足で前に2歩進む
- すぐに後ろへ2歩下がる
- これをできるだけ速く連続する
- 余裕があれば前5歩・後5歩に広げてもよい
回数の目安:前後1往復を10回、または20〜30秒を数本ほど(一例・目安)。前方向のジャンプ力を器具でさらに鍛えたい方は、ミニハードルを使ったトレーニングが発展メニューになります。

つまずいたら:切り返しで重心が遅れる場合は、幅を小さくして速さを優先してください。大きく動くより、素早く切り返すほうがこのドリルの狙いに合っています。
ドリル5|円の足さばき(左右・斜めの動き/速い→遅い)(応用)
狙い:左右・斜めの動きへの対応力をつけることです。剣道は前後だけでなく、若干の左右・斜めの動きも入ります。その足を自然に身につけるのがこのドリルです。
やり方は次の手順です。
- 縦長の円を描くように移動する(完全な丸にしない)
- 右回りは、右斜め後ろ・左斜め前へ動く
- 逆回りは、その逆に動く
- 速い動きから始めて、遅い動きへ応用する
回数の目安:右回り・左回りを各3〜5周、数本ほど(一例・目安)。どっしり構える相手には、遅い動きから入るとかえって対応しづらいので、速い動きを先に体へ入れておくのがコツです。
つまずいたら:完全な丸になって間延びしがちなときは、縦長を意識してください。なお、円の足さばきの種類や理論的な理由を深く知りたい方は、親記事で詳しく解説しています。この記事はあくまで手順に絞っています。

5つのドリルが分かったら、次は「どう組み合わせて回すか」です。その前に、5つを一覧で比較して整理しておきましょう。
5つのドリル比較表|打つ前・打った後・応用で選ぶ
5つのドリルを、狙い・使う場面・難易度で並べました。難易度は相対的な目安(★の数)です。
| ドリル | 主な狙い | 使う場面 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 1 左足重心 | 居着き解消・初速 | 打つ前 | ★☆☆ |
| 2 前後両方向 | 真ん中重心 | 打つ前 | ★★☆ |
| 3 打った後の抜け | 引き寄せ加速 | 打った後 | ★★☆ |
| 4 反復縦跳び | 前後の瞬発力 | 応用 | ★★☆ |
| 5 円の足さばき | 左右・斜め対応 | 応用 | ★★★ |
迷ったら、ドリル1→2→3→4→5の順に回すのが基本の流れです
順番のイメージができたら、実際の「1回分の組み方」を見ていきましょう。
5つのドリルの組み方|ウォームアップから実戦連動までの流れ
5つを単発でやるより、順番に組んで回すほうが効果が出やすいです。ウォームアップから実戦連動まで、1回分の流れを紹介します。
①ウォームアップ:足づくり
まずはその場すり足とドリル1(左足重心)で足をつくります。ここで左足に乗る感覚を戻してから、次に進むのが大切です。
②前後の初速:切り替えを速く
次にドリル2(前後両方向)からドリル4(反復縦跳び)へ。号令練習で方向を確認したあと、瞬発力を足していく流れです。前後の初速がここで整います。
③実戦連動:抜けを打突へ
ドリル3で身につけた「抜け」を、ここで実際の面打ち・引き技に連動させます。ドリルで作った動きを、実打の中で使えるかどうかがポイントです。
④仕上げ:円で左右・斜めを
最後にドリル5(円の足さばき)で左右・斜めの動きを仕上げます。速い動きから入って、遅い動きへ応用する順番を守ってください。
全体で毎日5〜15分程度から始めるのが取り組みやすいです(一例・目安)。ただし焦って回数だけ増やすと、フォームが崩れて逆効果になります。量より正確さを優先してください。
1回分のメニュー例:その場すり足 → ドリル1 → ドリル2 → ドリル4 → ドリル3 → 実際の面打ち・引き技 → ドリル5。ここに載せた回数はすべて目安です。
- 正確さを無視して回数だけこなす
- 疲れて姿勢が崩れたまま続ける
- 遅い動きから入って速さを後回しにする
続いて、よくいただく質問にまとめてお答えします。
剣道の足さばきを速くする練習のよくある質問
足さばきを速くするには何をすればいい?
まず左足重心を保ち、引きつけを速くすることからです。打つ前のドリル1・2と、前後の切り替えを鍛えるドリル4を組み合わせると、蹴り出しの初速が出やすくなります。詳しい手順は本文の5つのドリルをご覧ください(あくまで一例・目安です)。
毎日どれくらい練習すればいい?
毎日5〜15分程度を目安に、少しずつ取り組むのがおすすめです(一例)。回数を増やすより、正確さを優先してください。段階別の詳しい進め方は、親記事の足さばき練習法もあわせて参考になります。
初心者は何から始めればいい?
ドリル1(左足重心)からがおすすめです。うまくいかない場合は、右足を前に出したランジの姿勢から、左足を引きつけて右足を浮かせる分解練習に戻すと、感覚をつかみやすくなります。
送り足とすり足の違いは?
この記事は「速くする実践ドリル」に特化しているため、送り足・すり足の定義や種類・基本は親記事の足さばき練習法で詳しく解説しています。まず違いを整理したい方は、そちらをご覧ください。
畳や家(室内)でもできる?
その場すり足・反復縦跳び・円の足さばきは、省スペースでも取り組みやすいです(一例)。前方向のジャンプ力を器具で鍛えたい場合は、ミニハードルを使ったトレーニングの記事も参考になります。
円の足さばきはなぜ必要?
剣道は前後だけでなく、左右・斜めの動きもあるためです。この記事ではドリルの手順を紹介しています。足さばきの種類や使い分けの理論を深く知りたい方は、親記事をご覧ください。

個別指導・講演会
日本一9回が、その場で癖を見つけて、その場で直す。
マンツーマン、または最大3名の少人数で、実際に竹刀を交えて稽古できます。動画や言葉では届かない”手元の違和感”を、1回の稽古で1つ以上持ち帰ってもらう。これが個別指導の一番の価値です。
- 日本一9回の経験をそのまま共有(同じ壁は必ず通ってきた)
- 道場・学校・ご家庭の個人稽古、いずれも対応可能
- 初回ヒアリング無料。まずは現状を聞かせてください
※道場・学校単位での講演会・稽古会のご依頼もこちらから承っています。
まとめ|足さばきは「左足重心と引きつけ」+5ドリルで速くなりやすい
最後に、この記事の要点を整理します。
- 速さの軸は左足重心と引きつけ、そして体を浮かせず低く運ぶこと
- ドリルは打つ前(1・2)→打った後(3)→応用(4・5)の順で回す
- 回数はすべて目安。量より正確さを優先する
足さばきは、理屈を知るだけでは速くなりません。体に入れた人から速くなります。今日からまずはドリル1、左足重心の一歩から始めてみてください。
「自分の動きが合っているか確かめたい」という方は、下のご案内ものぞいてみてください。継続して稽古を積み重ねる仲間と、足元から強くしていきましょう。





