「すごいね」が子どもの伸びしろを止める|内発的動機を育てる声かけの型

「すごいね!」が、お子さんの伸びしろを止めているかもしれません
テストで90点を取ってきた。稽古でいい一本が打てた。絵が上手く描けた。
そんな時、つい「すごいね!」「やるじゃん!」と反射的に返してしまっていませんか?
実はこの何気ない一言が、お子さんの「自分で考える力」を少しずつ削っているかもしれないんです。
私自身もこの話をしていて、ハッと気づかされました。自分が小さい頃から完全に「外発的動機」で育ってきたことに。
今日は、お子さんの内発的動機(自分で動き出す力)を育てる声かけの方法を、具体的にお伝えします。
外発的動機と内発的動機、何が違うのか?
ここで用語を整理させてください。
外発的動機とは、外から与えられる報酬や罰によって動くこと。ボーナス、昇進、褒め言葉、あるいは「怒られたくないから動く」もこれに含まれます。
内発的動機とは、自分の内側から湧き出る興味・関心・達成感で動くこと。「これ面白いからもっとやりたい」「自分で成長を感じるから続ける」という動き方です。
外発的動機は短期的には効くけれど、報酬がなくなった瞬間に効果も消えます。内発的動機は長続きするうえに、創造性や主体性もどんどん伸びていきます。
どちらが悪いというわけではありません。ただ、ずっと外発的動機だけで育つと、報酬がなくなった瞬間に全部止まってしまう——ここが怖いんです。
私自身、外発的動機のかたまりでした
少し私の話をさせてください。
小学校時代、ゲームをするためには素振り1000本。休みの日は3000本振らないとゲーム機に触れませんでした。
試合で勝つと、祖母から1万円もらえました。その1万円でまた新しいゲームを買う。これが私の子供時代のルーティンでした。
中学・高校でも「成果を残さないと行きたい高校に行けない」「成果を残さないと授業料免除にならない」と言われ続けました。私にとって剣道は、欲しいものを手に入れるための「手段」だったんです。
でも振り返ると、あの時の私は外発的動機だけで突っ走っていました。
自分で試合ビデオを見て研究しろと言われても、寝ながら見るくらい興味がなかった。見たくもないと思っていた。「勝ちたい」と自分で思えた時だけ、急に研究が楽しくなったんです。
そこからグッと伸びました。あの時の自分は、初めて内発的動機で動けていたんだと思います。
「すごいね」が伸びしろを止める3つの理由
理由①:評価の主語が「親」になる
「すごいね!」と言った瞬間、お子さんの中で評価者が「お母さん・お父さん」に固定されます。
「親が喜んでくれる=正解」という回路ができると、お子さんは親の顔色を見ながら行動するようになります。
これは一見「素直な子」に見えますが、大人になった時に「自分がどうしたいかわからない」という大きな壁になって返ってきます。
理由②:子どもの自己評価を上書きしてしまう
90点……悔しい。もっといけたはずなのに。
お子さんがこう思っているかもしれない瞬間に、親が「すごいね!よく頑張った!」と返すとどうなるでしょうか。
「悔しい」という貴重な感情が、親の「すごいね」で上書きされてしまうんです。
その悔しさこそが、次に100点を取るための最大のエネルギー源だったのに。これは剣道で一本取られた時の悔しさも全く同じ構造です。
理由③:「次どうするか」が消える
「すごいね!」で会話が終わると、お子さんの思考もそこで止まります。
でも、もし親が「自分としてはどう思ったの?」と返したら?
「ここは上手くいったけど、この部分は詰められたと思う」と、お子さんの中で次の一歩が自然に生まれます。質問一つで、思考の深さが変わるんです。
内発的動機を育てる「声かけ」の型
じゃあ、どう声をかければいいんでしょう?褒めちゃダメなんですか?
褒めてはいけない、ということではありません。褒める前に「聞く」を入れるだけでいいんです。
子どもが結果を持ってきた時、反射的に「すごいね」と言う前に、一拍置いて「自分としてはどう思ったの?」と聞いてあげてください。たったこれだけで、会話の主語が「親」から「子ども自身」に戻ります。
お子さんが絵を見せてきた時も同じです。「きれいだね」で終わらせず、「どこがポイントなの?」と聞き返す。
すると、「ここのピンクを一生懸命塗ったのが自慢」と返ってきたりします。そこで「確かにそこ綺麗だね。考えて描いたんだね」と共感すれば、お子さんの中で「自分で考えたことが認められた」という内発的な達成感が育ちます。
剣道の稽古後も全く同じです。「今日はどうだった?」「自分としては何ができて、何ができなかった?」——この問いかけが、お子さんを「自分の稽古の主人公」にしてくれます。
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今日からできる3つの一歩
具体的に、今日からお子さんに試せる方法を3つご紹介します。
結果を持って帰ってきた瞬間、グッとこらえて先に質問する。これだけで声かけの型が変わります。
最初は違和感があって当然です。でも1週間続けると、お子さんの方から「今日のここは自分的に良かった」と話してくるようになります。
「勝ったからすごい」ではなく、「毎日素振り続けてたもんね」と過程を言葉にする。
これは結果が出なかった日にも効きます。負けた日にこそ「今日ここまで粘れたのは、毎朝の素振りがあったからだよね」と過程を肯定してあげてください。
過程を認められた子は、結果に振り回されず、続ける力を身につけます。
稽古後、試合後、テスト後。会話の最後に「じゃあ次どうしたい?」と一言添える。
「親に褒められるため」ではなく「自分で決めた次の一歩」に向かう子は、自動的に伸びていきます。この一言だけで、お子さんの思考の向きが過去の評価から未来の設計に変わります。
まとめ:外発的に始まっていい。ただし、内発的に育ててあげたい
誤解のないようにお伝えすると、外発的動機が悪いわけではありません。
私自身、小学生の頃はゲームや1万円が原動力でした。最初のきっかけは、外発的でも全く問題ないんです。
ただ、そこからどこかのタイミングで「自分でやりたい」に変わらないと、報酬がなくなった瞬間に燃え尽きてしまう。
その変化のスイッチが、日々の声かけです。
「すごいね」の前に「どう思ったの?」。結果ではなく過程に触れる。最後に「次どうしたい?」。この3つを意識するだけで、お子さんは少しずつ、自分の人生の操縦桿を握り始めます。
私も実は今、自分の子育てでこれを強く意識しています。外発的動機でここまで来た人間だからこそ、同じ道をなぞらせたくない、という気持ちがあるんです。

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