玉竜旗15人抜き|松村太樹選手インタビューと勝ち抜き戦のコツ

2025年の玉竜旗高校剣道大会(第96回)で、会場全体がどよめいた瞬間がありました。
なんと・・・。「15人抜き」
その偉業を成し遂げたのが、星槎国際高等学校の松村 太樹選手です。しかも、まだ高校2年生でした。
相手チームの選手を次々と抜き続ける姿は、観客の目を釘付けにしました。私も現地でその戦いを見ていましたが、勝ち抜き戦の過酷さを知っているからこそ、素直に驚かされました。
この記事では、その松村選手への試合直後インタビューに加えて、「15人抜きが本当はどれだけ非常識な記録なのか」と「玉竜旗の勝ち抜き戦を制するコツ」までまとめてお届けします。
- 「15人抜き」って、実際どれくらい凄いことなの?
- あれだけ抜き続ける選手は、普段どんな稽古をしているの?
- 玉竜旗の勝ち抜き戦って、何を意識すれば勝てるの?
- 強豪校が当たり前にやっている「戦い方」を知りたい
今回の記事で分かることは下記のとおりです。
- 高校2年生で15人抜きを達成した松村選手の生の声
- 15人抜きがどれだけ規格外の記録なのか、現場の実感ベースで
- 15人抜きを支えた体力・技術・食事の3つの土台
- 玉竜旗の勝ち抜き戦を制する「抜き替えさせない」戦術
- 玉竜旗という大会が面白すぎる理由
彪雅KENDO合同会社
代表 梶谷 彪雅
大分県出身。高森中学校、九州学院高等学校、明治大学卒業。剣道の全国大会で9回の優勝を経験。現在は指導者・発信者として活動し、玉竜旗も現地で取材しています。
読みたいところから読み進めてください。気になるテーマをタップすると、その章にジャンプできます。
| 知りたいこと | 読むべきセクション |
|---|---|
| 15人抜きの凄さを知りたい | 15人抜きはどれくらい凄いのか |
| 本人の生の声が聞きたい | 試合直後の率直な気持ち |
| 練習メニューを知りたい | 体力強化のメニュー |
| 勝ち抜き戦で勝ちたい | 勝ち抜き戦を制するコツ |
| 疑問をサクッと解消したい | よくある質問 |
「15人抜き」はどれくらい凄いのか|現場で見た本当の価値
まず、数字だけ聞いても「15人? 多いのは分かるけど」で終わってしまう方が多いと思います。ここを最初に共有させてください。
5人抜きの時点で、みんな「きつい」と言う
今回の大会では、5人抜き・10人抜きを達成した選手にも何人かインタビューをさせてもらいました。
その全員が、口をそろえて「きつい」「辛い」と答えています。5人抜くだけでも、それくらい過酷なんです。
玉竜旗は勝ち抜き戦です。勝てば休めず、そのまま次の相手と向き合うことになります。先に息が上がるのは、必ず抜いている側。抜けば抜くほど、自分だけが消耗していく仕組みなんですね。
相手は常にフレッシュな状態で出てきます。体力が落ちた状態で、元気な相手を迎え続ける——これが勝ち抜き戦の本当の残酷さです。
今大会、私が見た限り15人抜きは松村選手だけ
会場内のアナウンスを聞いている限り、他に15人抜きを達成した選手はいなかったと思います。
抜いた人数ごとに、現場で何が起きていたのかを整理すると、こうなります。
| 抜いた人数 | 現場で起きていたこと |
|---|---|
| 5人抜き | 達成した選手全員が「きつい」「辛い」と回答 |
| 10人抜き | 福岡第一・村田選手、東海大札幌・鈴木選手、磐田東・松木選手が達成 |
| 15人抜き | 私が見た限り、松村選手が今大会で唯一 |
5人でヘトヘトになる世界で、その3倍を高校2年生がやってのけた。数字の重みが伝わるでしょうか
10人抜きを達成した選手たちのインタビューも、それぞれ別記事にまとめています。あわせて読むと、勝ち抜き戦の過酷さがよりリアルに伝わるはずです。


試合を見て感じた、松村選手の武器
試合を見ていて一番強く感じたのは、瞬発力と、瞬間的なスピードの速さでした。
副将戦をやっているところも見ていましたが、スピードも落ちず、正直まったくきつそうに見えなかったんです。
ところが本人に聞くと「5人抜きするのはすごくきつい」と言う。この見た目と体感のギャップこそ、この選手の本当の強さだと思っています。
強い選手は、きつくないのではなく「きつさを表に出さない」んです。相手から見て余裕に映ること自体が、すでにひとつの武器になります。
梶谷彪雅
では、その裏側で本人は何を感じていたのか。ここからは試合直後のインタビューを、そのままお届けしていきましょう。
「正直…しんどかった」——15人抜き直後の率直な気持ち
梶谷──15人抜き、おめでとうございます!
今の率直な気持ちは?

松村選手:
「嬉しいです!」
飾らない、まっすぐな一言でした。
観客から見れば、まだまだ余力を感じる動き。しかし当人は、ずっと体力との戦いを続けていたわけです。
ちなみに、これだけ動き続けられる選手は防具選びもシビアです。軽さと守りのバランスについては、こちらでモデル別に比較しています。

喜びの一言の裏側で、彼は試合中どこまで自分を追い込んでいたのか。次はその「限界」について聞いています。
試合中に感じた手応えと限界
梶谷──試合を見ている限り、4人目、5人目になっても落ち着いているように見えました。実際はどうだったのでしょう?

松村選手:
「まだいけるかなと思ったんですけど……ちょっと無理でした」
見た目の余裕と、実際の体感はまったくの別物でした。
限界と戦いながら、それでも一本一本を積み重ねていく。この「もう無理」の少し先まで立ち続ける精神力こそが、15人抜きの正体だと思います。
剣道という競技が、単なる勝ち負けを超えたところで人を鍛える理由も、ここにあります。全日本剣道連盟は、剣道の理念をこう定めています。
剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である
剣道の理念|全日本剣道連盟
限界のなかで自分と向き合う時間そのものが、剣道では価値になります。15人抜きは記録であると同時に、その修錬の結果でもあるわけです。
では、その「もう一本」を出し切るための体力は、どうやって作られたのでしょうか。ここからは具体的な練習メニューを見ていきます。
【体力強化】毎朝の走り込みとスプリント
15人抜きを支えたのは、特別な裏技ではなく、日々の体力強化メニューでした。
梶谷──体力面の強化としてやってきたことは何かありますか?
松村選手:
「朝は3km走って、
その後30mダッシュを10本くらいします」
この答えを聞いて、私はすごく納得しました。長距離と短距離、性質のちがう2つを毎朝セットで積んでいるんです。
- 3kmの走り込み
-
試合が続いても落ちない持久力の土台。勝ち抜き戦の後半で効いてくる部分
- 30mダッシュ×10本
-
一足一刀からの爆発的な加速力。試合を見て感じた「瞬間的なスピード」の源
持久力だけでは、後半に打ち切る鋭さが残りません。逆にスピードだけでは、そこまで体力が保たない。
ポイント:勝ち抜き戦で必要なのは「長く動ける体」と「一瞬で出られる体」の両方です。どちらか片方だけでは、抜き続けることはできません。
特別なマシンも、高額なサプリも出てきませんでした。朝、走る。それだけを続けた選手が、あの舞台に立っていたわけです。
体の土台が分かったところで、次は技術面。松村選手が繰り返していた稽古を見ていきましょう。
【技術強化】100本の切り返しが生んだ鋭さ
梶谷──上半身の強化や素振りは、何か特別なことをされていますか?
松村選手:
「素振りというより、切り返しをずっとやっていました。稽古の中で100本とか」
「素振り」ではなく「切り返し」と答えたところが、個人的にはとても興味深いポイントでした。
切り返しは、正しい打突・体さばき・呼吸・体力づくりを一度に鍛えられる稽古です。それを100本単位で積み上げていたわけですね。
この反復が、松村選手が試合で見せた鋭い攻めと連続技につながっています。華やかな15人抜きの裏側にあったのは、地味で反復的な稽古でした。
- 体力:朝3kmの走り込み+30mダッシュ10本
- 技術:稽古のなかで切り返し100本
- 継続:どちらも「毎日の当たり前」にしていた

特別なことをしていないのに結果が違う。その差は「同じことを何本やったか」なんですよね
体力と技術の土台が見えてきました。では、コンディションを支える食事はどうしていたのか。ここも聞いています。
【食事と栄養】特別な調整はせず、日常のまま
梶谷──大会に向けて、食事の調整は何かされましたか?
松村選手:
「特にないです。いつも通り食べていました」
梶谷──肉派ですか、魚派ですか?
松村選手:
肉派です
梶谷──ごはん派ですか? パン派ですか?
松村選手:
ごはん派です!
特別な制限や調整はせず、日常の食生活をそのまま続けるスタイルでした。
ここは意外に大事なところだと思っています。大会前に急に食事を変えるのはおすすめできません。体が慣れておらず、コンディションを崩す原因になるからです。
- 大会直前に食事内容を大きく変える(体が慣れていない)
- 試合前だからと食べる量を減らしすぎる(勝ち抜き戦は総力戦)
- 普段やっていない調整を本番だけ試す(リスクしかない)
自然体のコンディショニング。それが、長期戦でも安定したパフォーマンスを支えていました。

体力、技術、食事。土台が全部見えたところで、本人が次に見据えているものを聞いてみました。
次なる挑戦は「20人抜き」
梶谷──次への意気込みをお願いします。
松村選手:
「決勝まで抜く気持ちで頑張ります」
15人抜きを達成した直後に、この言葉です。目線はすでに次の挑戦へ向いていました。
「決勝まで抜く」というのは、勝ち抜き戦において最初から最後まで自分が立ち続けるという意味です。想像するだけでも、とてつもない覚悟だと感じます。

その姿勢こそが、これからのさらなる飛躍を予感させます。ここまでが個人の話。ここからは、チームとして玉竜旗を勝ち抜くための戦術に話を進めていきましょう。
玉竜旗の勝ち抜き戦を制する最大のコツ|「抜き替えさせない」
ここからは、玉竜旗を現地で見てきた立場から、勝ち抜き戦のいちばん大事なポイントをお伝えします。
この話は、来年も再来年も変わらない普遍的な考え方です。団体戦を戦うすべての選手・指導者に知ってほしい部分でもあります。
大切なのは「何人抜いたか」ではない
勝ち抜き戦では、1人抜いてもいいし、2人抜いてもいい。極端に言えば、どちらでもいいんです。
でも本当に大切なのは、抜いた後に負けないということ。
勝った後に先鋒を抜き替えられてしまうと、次鋒対次鋒に戻ってしまうじゃないですか。せっかく1人抜いたのに、状況としては振り出しなんです。
ここが肝心です。先鋒で勝って、次鋒を引き分けることによって、相手の次鋒も一緒に引きずり下ろすことができるんですよ。
そうすると、こちらの次鋒が相手の中堅と戦うことになります。同じように1人抜いて1人引き分ければ、今度は中堅対大将です。
図解:抜き替えられた場合と、引き分けた場合
言葉だけだと分かりにくいので、先鋒が1人抜いた後の展開を並べて比べてみます。
| 先鋒が勝った後 | 次の対戦 | 試合の流れ |
|---|---|---|
| 相手の次鋒に負ける(抜き替えられる) | 自チーム次鋒 vs 相手次鋒 | 振り出しに戻る |
| 相手の次鋒と引き分ける | 自チーム次鋒 vs 相手中堅 | 相手を2人減らせる |
同じ「1人抜いた」でも、その後の1試合で状況がまったく変わります。抜いた価値を残せるかどうかは、次の試合の戦い方次第なんです。
こんな感じで、勝った後は絶対に抜き替えさせないというのが、玉竜旗最大のポイントだと思っています。
逆に言えば、抜いた直後に無理をして負けるのが一番もったいない。ここは指導の現場でも繰り返し伝えている部分です。
勝ち抜き戦は「勝つ技術」と同じくらい「負けない技術」が要ります。引き分けは逃げではなく、チームを前に進める立派な戦術です。
梶谷彪雅
女子優勝校の先鋒に学ぶ「完璧な勝ち抜き」
この戦術を、まさに体現していたのが女子で優勝した楢橋選手です。
楢橋選手は24戦中17勝、残りは全部引き分け。つまり、一度も負けていないんです。マジで最強ですよ。
17勝という数字ももちろん凄いのですが、私が注目したいのは「残り7試合を全部引き分けている」という部分です。
ここまで読んでくださった方なら、その意味が分かるはずです。勝った後に抜き替えさせず、相手を引きずり下ろし続けたということですから。
勝った後は負けない。これがものすごく大事なポイントです。
その楢橋選手本人にも、大会後にインタビューをさせてもらいました。「勝ちをつなぐ覚悟」を、ぜひ本人の言葉で読んでみてください。

この戦術を意識することが、玉竜旗を勝ち抜くための最高のコツだと確信しています。とはいえ、玉竜旗はその戦術どおりに進まないから面白いんです。次はその話をさせてください。
玉竜旗という大会の最大の魅力は「予測不可能性」
玉竜旗の勝ち抜き戦は、まぎれもない総力戦です。
仮に先鋒・次鋒・中堅・副将が抜かれてしまったとしても、大将が逆に抜き返していくという可能性が、最後の最後まで残っています。
本当に何が起きるか分からない。これが玉竜旗最大の見どころです。
- 勝ち抜き戦
-
勝った選手が試合場に残り続ける方式。抜けば抜くほど自分だけが消耗していく
- 抜き替え
-
勝ち続けていた選手が敗れ、相手側の選手が代わりに勝ち抜き役になること
- 総力戦
-
5人全員の力で戦う形。誰か1人が崩れても、後ろが取り返せる可能性が残る
だからこそ、格上と当たっても最後まであきらめる理由がありません。先鋒が15人抜きをする一方で、大将が5人を抜き返すこともある。
女子も面白かったのですが、男子はやはりスピード感があって、見ていて引き込まれます。
予測不可能だからこそ、僕は玉竜旗という大会をずっと愛しています
\勝ち抜ける体と技を本気で作りたい方へ/

ここまでで、記録の価値と戦術の考え方が見えてきたと思います。最後に、読者の方からよくいただく質問にまとめてお答えしていきましょう。
玉竜旗の「15人抜き」に関するよくある質問
玉竜旗の「15人抜き」とは何ですか?
玉竜旗は勝ち抜き戦のため、勝った選手はそのまま試合場に残り、相手チームの次の選手と戦います。この形式で相手の選手を15人抜くことを「15人抜き」と呼びます。2025年の玉竜旗(第96回)男子では、星槎国際高等学校の松村太樹選手が高校2年生で達成しました。
15人抜きはどれくらい凄いことなのですか?
今大会で5人抜き・10人抜きを達成した選手に取材したところ、全員が「きつい」「辛い」と答えていました。5人抜くだけでも相当に過酷です。会場のアナウンスを聞いていた限り、また私が現地で見た限りでは、今回15人抜きを達成したのは松村選手だけでした。
松村太樹選手はどんな練習をしていたのですか?
体力面は「朝3kmの走り込みと、30mダッシュを10本くらい」。技術面は「素振りというより、稽古の中で切り返しを100本」とのことでした。食事は特別な調整をせず、いつも通り。肉派・ごはん派だそうです。
玉竜旗の勝ち抜き戦はどういう仕組みですか?
勝った選手が試合場に残り、勝ち続ける限り戦い続ける方式です。5人全員で戦う総力戦のため、先鋒から副将までが抜かれても、大将が逆に抜き返していく可能性が最後まで残ります。この予測不可能性が玉竜旗の見どころです。
勝ち抜き戦で勝つコツはありますか?
「抜いた後に負けない」ことです。勝った後に抜き替えられると次鋒対次鋒に戻ってしまいますが、勝った後に引き分ければ相手をもう1人引きずり下ろせます。女子で優勝した楢橋選手は24戦中17勝、残りはすべて引き分けでした。
疑問が整理できたところで、最後に記事全体をまとめておきます。
【まとめ】松村選手が示した「持続する力」と「攻める姿勢」
15人抜きという記録の裏には、華やかさよりも毎朝の走り込み、100本の切り返し、日々の積み重ねがありました。
- 高校2年生での15人抜きは、5人抜きでも「きつい」と言われる世界での快挙
- 支えていたのは朝3km+30mダッシュ10本、切り返し100本という地道な反復
- 勝ち抜き戦を制する最大のコツは「抜き替えさせない」=勝った後に負けないこと
- 総力戦ゆえの予測不可能性こそが、玉竜旗の最大の魅力
その地道な努力が、大会での爆発的なパフォーマンスを生み出しています。次は「20人抜き」を目指す松村選手。その挑戦から目が離せません。
そして読んでくださったあなたも、次の稽古で「抜いた後に負けない」を意識してみてください。団体戦の景色が、きっと変わります。
八代白百合・中司選手の優勝インタビューはこちら

島原高校・大将 北村選手のインタビューはこちら

大会全体の結果は、こちらのまとめ記事で確認できます。

【2026年7月 追記】翌年の第97回(2026年)でも、15人抜きが生まれました。本庄第一(埼玉)の先鋒・吉野一真選手(3年)です。今年の15人抜きは、達成した直後にご本人へ伺っています。

2026年(第97回)の結果は、こちらで随時更新しています。










